版画の技法 一覧(各種類をわかりやすく解説)
1. 凸版とは?
インクを版上の出っ張った部分(凸部)に塗り、その上から紙をのせて写しとる技法。
木版画
もっとも古くから使われてきた技法。版木を彫り出したい線や面を残して版面を彫り下げ、凸部にインキを塗って紙に摺る方法です。
鮮やかな発色と独特の温もりのある風合いが特徴です。
2. 平版とは?
版の表面は平らなままで、インクののる部分とのらない部分を作って転写する技法。
リトグラフ
別名「石版画」とも呼ばれ、木版画や銅版画のように板面の凹凸を介して刷り出すのではなく、平面上で水と油の反発しあう性質を利用した方法。
今日では石板のかわりにアルミ板や亜鉛板を用いることもあります。作家が描画した繊細な線のタッチや、筆づかい、インクの効果など、描いたものをそのまま刷ることができるのが特徴です。
ピカソ、シャガール、ミロ、マチスなど20世紀の巨匠の多くがリトグラフを手掛けています。
コロタイプ
写真製版の技法で、ガラス板に重クロム酸銀を含んだゼラチンを塗り、版を作ります。写真と同じような連続諧調による自然な濃淡表現が魅力です。
3. 凹版(直刻銅版)とは?
版上のへこんだ溝の部分(凹部)にインクを詰め、表面の余計なインクを取り除いたあとに刷りとる技法。
エングレーウィング
1420~30年ごろに発生した最も古い銅版画技法。ビュランと呼ばれる先端を菱形に鋭く研いだ彫刻刀で銅版に直接線を掘っていく技法。硬質でシャープな線が特徴です。
ドライポイント
先端が鋭くとがった鉄筆(ニードル)で銅板に直接、刻み込む技法。ビュランとは異なり自由に線を描くことが可能で、様々な表情が生まれます。
刷りとられた線には独特のインクのにじみが生じるのが特徴です。ビュッフェが好んで取り組んだ技法です。
メゾチント(マニエール・ノワール)
最初に無数の細かいめくれを版全体に付けてから、スクレーパーやバニッシャーで線を削りだしていく技法です。
そのめくれの削って磨いた部分の強弱によって、さまざまなトーンの明暗・濃淡を表現できますが、大変な労力と時間、テクニックが必要な技法です。
19世紀半ば以降、忘れられた技法でしたが、長谷川潔が現代版画の技法として復活させました。
4. 凹版(腐食銅版)とは?
金属が酸によって腐食する性質を利用して銅板に凹みを作る技法。
エッチング
磨いた平銅板に防蝕剤を塗り、その上からニードルで引っかくように線を描きます。その版を酸で腐蝕すると、そこだけが線上のくぼみとなります。
腐食の時間や濃度などによって線の強弱が現れるため、ニュアンスに富んだ描線が表現できます。
5. 孔版とは?
シルクスクリーン
枠(木やアルミ)に張ったスクリーン(シルクやテトロン)の目を、絵柄や模様の部分だけを残して、インクが通らないように目止めをして、絵柄や模様の孔(あな)の部分から下の用紙や布にスクイージー(へら)や刷毛などでインクを落として刷る技法です。
メリハリのある鮮やかな色彩の表現に秀で、現代アートの版画作品によく用いられています。
6. 高級美術複製画・彩美版®とは?
長年の経験により培われた画像処理技術を元に、厳選された素材に高精度デジタルプリントを施し、画材の質感と豊かな色調を再現した共同印刷独自の高級美術複製画です。
原画の持つ微妙なニュアンスや、作家の筆遣いといった絵の鼓動までも表現しています。
半世紀以上にわたり高級複製美術品の制作を続ける共同印刷の「彩美版®」は、業界屈指のブランドとして、その高い品質から多くの美術愛好家の方に支持されており、美術関係者からも高い評価を得ています。